音楽活動で経験したノルマのお話

ノルマって辛いですよね。僕も仕事が営業職なので毎日数字のノルマに追われています。そして最近、Twitterでライブハウスやクラブの集客ノルマについて話題になっていたのでちょろっと書いてみました。

ノルマに賛成?反対?

まず集客のノルマに賛成か反対か。僕は反対派です。理由は駆け出しのころに自分がしんどい思いをしたから、同じ思いを出演者にしてほしくないからという、シンプルなものです。しかしただノルマを忌み嫌っているというわけではなく、主催者にも出演者にも様々な都合がありますし、イベントの内容によってもどうしても数字を設定しなければならない場面もあるでしょう。

ちなみに僕が今までに経験してきたのはざっくり分けてこんな感じ。

  1. ノルマなし
  2. ノルマはないけど1ドリンクだけオーダー
  3. ノルマはないけど〇人以上呼んだら〇〇円バック
  4. ノルマあり、バックもあるけど売れ残りはすべて買い取り

ゆるいイベントだと1~3のパターンが多く、向上心が強かったり収益を求めていたりガチなイベントになると4のパターンが多くなってきます。

例外としてイベントスタッフを兼任するとノルマを除外されたりします。本来買い取るべきノルマを労働力で相殺するってやつです。特にDJをやってると機材の使い方に強くなったり、トラブルの穴埋め・繋ぎで音楽を流すこともできたりするので、現場によっては重宝されることも。

ノルマ経験談

まずは僕の経歴をざっくりと。

  • 16歳 地元でラッパーとして曲作り開始
  • 18歳 クラブでのライブ活動開始
  • 同年 コミケでCDを売り始める
  • 20歳 イベントの主催をスタート
  • 23歳 DJとして活動開始
  • 25歳 大阪へ移住、DJを続けつつイベントも主催

マイク1本でのし上がるぞ!という勢いのあるスタートから、徐々に主催を始めたりDJをしたりと裏方にまわっていく流れです。今もその延長で細々と続けています。

さて、ここからがそんな僕の体験談です。

※諸事情により登場する数字はちょろっといじってます

ノルマがなかったイベントの話

2006年、僕がまだ駆け出しのラッパーだったころ、イベントの出演というのは地元の先輩からのお誘いがほとんどでした。当時はまだスマートフォンもなく、SNSも今ほど発達していなかったので気軽に外部と繋がってDMでオファー、なんてことはほぼありません。

そんな中で初めてもらった出演オファーは大学の先輩からのお誘いで「へえ、ラップやってるんだ。俺らイベントやってるからステージに立ってみない?」くらいの軽いノリでした。チケットノルマがないのにもかかわらず、お客さんも結構入っていて雰囲気が良かったのを覚えています。演者にノルマをかけなくても自然とお客さんが集まる、そんなパーティーで毎回楽しみにしていました。

しかし地元で活動を続けていろんな現場に入るようになると、そんなイベントばかりではないということを思い知らされます。

いくらノルマがないイベントであったとしても、先輩のイベントに出させてもらっておいて集客ゼロというわけにはいきません。オープン直前に路上へ出て、道行く人に声をかけてチケットを売りつけ入場してもらうことでなんとか先輩への面子を保った、なんてこともありました(その際にしつこく声をかけてた人がとても怖い人で散々な目にあったことも…)。そうなるともうただのキャッチですし、しかもそうやって呼び込んだお客さんの滞在時間は短く、1時間もしないうちに帰ってしまうことがほとんど。チケット代は落としてもらえたけど、そこまでして呼び込む意味があったのか、ノルマのようなものを達成する必要はあったのか、自分の行動は正しいものだったのか。今でも疑問に思っています。

大規模なイベントの話

地道に活動を続けていたある日、とあるメジャーアーティストが出演するイベントのオファーを頂きました。そのアーティストは現在も新譜を出し続け活躍しているほどの有名どころ。そんなゲストと共演できるなんて!と、テンションは上がったのですが、その時に提示されたノルマが30枚、仮に半分売ったとしてもノルマ買取で4~5万円ほど自腹を切る必要がありました。

しかも地方なので市場は狭く、出演者同士でパイの奪い合いも起きるので半分売れるかも怪しく、当時の僕はそのリスクを負えず泣く泣くオファーを断ることにしました。しかしオーガナイザーからしたらゲストがゲストなだけに、若手に対するそのノルマは当たり前だったかな、とは今でも思います。

このノルマを逆手に取った話もあります。”ライブは普通、人柄も秀でたものはない、プロップスもあるようにはみえないけど規模の大きいイベントや豪華ゲストが出演しているイベントによく出演しているラッパー”がいました。当時は不思議に思いながらも、”よくわからないけどすごい人なんだな”と思いながら接していました。

しかし他の先輩方から話を聞くと「あいつはチケットをほとんど売ってこないけど、大勢の前でライブしたいから自腹切って出演してるんだ。主催側もノルマを買い取ってくれて助かるから声をかけてるんだよ」という驚きの事実が。

持ちつ持たれつだからお互いに利用する、悪いことではないと思いますが、他の出演者が必死こいて集めたお客さんに乗っかってライブするのはどうなんでしょう?これに関してはノルマを払っていたとしても、仮に最初からノルマがなかったとしてもダサいなーと思ってしまいます。ラッパーとしてかっこつけてるんだったら生き方もかっこつけて欲しいところ。

主催側する側になりノルマのない世界へ

ライブ出演をこなしているうちに、仲間内でイベントを立ち上げることになりました。自分たちの主催なのでノルマはありませんでしたが、赤字が出た時はメンバーで割り勘して負担することなるので、どちらにせよ集客をする必要はありました。実質ノルマみたいなものです。

人気のあるクルーを呼べばギャラも高く、さらに人数分の宿泊交通費も必要になってくるので経費が膨れ上がります。ある時は結構なお客さんが入ったにもかかわらず、主催側の赤字負担は1人頭〇万円なんてことも。しかしこれも自己責任の話で、集客の出来てなかった自分たちの力不足です。それが主催としての頑張りが足りなかったのか、出演者としての頑張りが足りなかったのか、おそらくは両方でしょう。

以上が僕の体験談です。こういった話はまだゆるい方で、まだまだエゲツないノルマ体験をした方は大勢いると思います。とても表向きにはできない話だったりするだけで。

そもそもノルマ話の発端は

ここ最近、ヒップホップ界隈でノルマの話がTwitterで話題になっているのは、とあるラッパーが「ラッパーにはノルマをかけずに出演料を払って。集客は箱側の仕事です」と言い切ったのが発端です。

ラッパーは制作とパフォーマンスに100%集中したいというのは理解できます。だからノルマではなくギャラが欲しい、もちろんこれもわかります。しかし引っ掛かったのは最後に「集客は箱側の仕事」と言い切ってしまったところ。

正確には「集客するための段取りが箱側(または主催者)の仕事であり、その段取りの1つが出演者の選出」だと思うんです。その選出基準のひとつが”このラッパーが出演してくれたらお客さんが〇〇人くらいくる”という見込みだったりします。そう考えると出演者のギャラというのはその集客見込みに対して発生するもの。出演者は自分の名前で自然と人が集まるようになってから初めてその対価としてギャラがもらえるのではないでしょうか。

長々となりましたが、そういう苦言を呈していたラッパーも音源聴いたらかっこよかったし、僕もノルマには反対している身なので、コンビニバイトみたいにとりあえず出演したらギャラがもらえる、みたいな時代が来たらいいなーとは思います。ノルマに苦しみそのせいで芽が出ないプレイヤーがいるのは悲しいので。

ノルマ地獄 (DJ SU Remix) – 神門

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク